アポフィス
2013.01.09
 アポフィス((99942) Apophis)は2004年に発見された小惑星で,2029年に地球に衝突する可能性がわずかにあるとして話題になった。1月9日(世界時)には,地球から約1450万kmの距離まで最接近した。
 こうした天体は,発見当初は軌道が不確実なため,衝突の可能性がわずかにあるとされることがある。しかし何度か追観測を行って軌道を精度よく絞り込んでいくと,そのうち確率がゼロであるとわかる。
 アポフィスの場合,2029年の最接近時には地球表面から約3万kmの距離を通ることが発見後の観測からわかっている。2036年の最接近で衝突する可能性はわずかに残っているが,今回の接近の観測結果から2036年の衝突の可能性もなくなるかもしれない。
 欧州の天文衛星「ハーシェル」も,最接近直前の1月5日~6日にアポフィスを観測した。2時間にわたって複数の赤外線波長で得たデータを可視光観測と合わせたところ,アポフィスの平均直径はこれまで推測された270±60mからやや大きい325±15mに修正された。また,温度データから,天体表面の太陽光反射能も新たに見積もられた。太陽光による温度の上昇も長いスパンで軌道に影響するので,これも大事な要素である。(AstroArts)
NASA