銀河にかかる橋
2012.11.22
 銀河団と銀河団の間の空間にひそむ物質は今まではっきり見ることができなかった。しかし『プランク』はその秘密を解くヒントを与えてくれる」(NASAジェット推進研究所のJames Bartlettさん)。
 マイクロ波天文衛星「プランク」の主要な目的は,宇宙マイクロ波背景放射,つまり,宇宙最古の光をとらえることである。
 この宇宙マイクロ波背景放射が巨大銀河団などに含まれる大量の高温ガスにさえぎられたとき,その放射のスペクトルがある特定の変化を見せる。プランクは,「スニヤエフ‐ゼルドビッチ効果」(SZ効果)と呼ばれるこの現象を利用して銀河団の検出を行ってきたが,さらに,銀河団と銀河団をつなぐ希薄なガスのフィラメント(繊維状構造)を検出することもできる。
 初期宇宙の空間は,クモの巣のように広がった巨大なガスフィラメントで満ちていた。そういった複数のフィラメントが交差する高密度の結び目部分で銀河団が作られる。したがって,銀河団と銀河団の間にもこのガスが存在するだろうと予測されていたが,そのほとんどは未検出のままである。
 今回発見された,銀河団Abell 399とAbell 401をつなぐ高温ガスの橋は,今までの予想を検証できる絶好のチャンスとなった。互いに1000万光年も離れた2つの銀河団をつなぐ橋の存在は,ESAの天文観測衛星「XMMニュートン」のX線データから初めてそれらしきものが見つかり,プランクの観測で確認が行われた。さらにドイツの天文衛星「ROSAT」のX線データとあわせて解析したところ,橋を作るガスの温度は8000万℃程度で,結ばれている2つの銀河団の温度に近いこともわかった。
 初期解析の段階では,このガスの橋は、隠れたフィラメントに銀河団のガスが混ざったものと考えられている。さらに詳細な解析と,他の多くの例を見つけることで,フィラメントの詳細が明らかになっていくと考えられる。
(AstroArtsより)
NASA
プランク衛星
 プランク (Planck) は,宇宙背景放射を観測するための高感度・高分解能の観測装置を備えた人工衛星である。ESAで2000年に3番目の中規模計画として計画された。当初はCOBRAS/SAMBAと呼ばれていたが,後にノーベル物理学賞を受賞したドイツのマックス・プランクにちなんで改名された。
 計画はNASAのWMAP探査機が広視野・低感度であるのに対し,プランクは対照的である。相補的な成果や宇宙創世記の解明が期待される。2009年5月14日にアリアン5でハーシェル宇宙望遠鏡と共に打ちあげられた。
 2012年1月14日、2つの観測装置のうち高周波数装置 (HFI) が冷却剤の枯渇のため寿命を迎えた。以降は低周波数装置 (LFI) のみで観測を続ける予定である。(ウィッキーペディアより)
 
スニヤエフ・ゼルドビッチ効果
 スニヤエフ・ゼルドビッチ効果は,宇宙空間に存在する高エネルギーの電子が,逆コンプトン効果(通常のコンプトン効果とは逆に,電子のエネルギーが,エネルギーの低い光子に転移する)により,宇宙マイクロ波背景放射を歪める現象である。観測されたCMBスペクトルの歪みは,宇宙の密度摂動を検出するのに利用されている。スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を用いることにより,いくつかの密度の高い銀河団が観測されている。(ウィッキーペディアより)