再起した惑星状星雲
2012.11.17
  太陽の8倍未満の質量の恒星は晩期を迎えると,赤くふくれあがった赤色巨星となり,外部層の物質を周囲に放出する。残された星の高温の核が放つ紫外線で発光した周囲のガス層が,「惑星状星雲」と呼ばれる天体になる。
 地球から5500光年かなたの惑星状星雲「アベル30」の中心にある星は約1万2500年前,外部層の物質を乗せた高密度の恒星風をゆっくり放出しながら,最初の死を経験した。画像に見える大きな球殻状の層はこのときのものである。
 そして,850年前星は再び息を吹き返した。恒星の核の周囲の物質が断熱収縮し,再び核融合反応が始まった。そのエネルギーが残りの外部層を加熱し,星は炭素とヘリウムが大量に含まれるガスを咳のように吐き出す。
 外部層が急膨張し,一時的に赤色巨星の姿に戻った星は,わずか20年後に急速に収縮して2度目の死を迎えた。このとき星の最後の息として吐き出された時速1400万km以上の高速恒星風が,それ以前に噴出された物質に追いついてぶつかり,中心部に見える彗星のような美しく複雑な構造を作り上げた。こうして2度目の死によって,星雲の内部にさらに小さな惑星状星雲が作られた。
 周りの物質にぶつかった恒星風の様子は,地球やその他の太陽系の惑星が数十億年後に迎えるかもしれない凄まじい未来を見せてくれる。太陽は晩期を迎えると赤色巨星になり,近くの惑星を飲み込んでしまう。だがたとえ生き残ったとしても,太陽が惑星状星雲の中で吐き出す最後の息とともに,惑星は強力な恒星風と強烈な放射線に襲われ、蒸発してしまうと考えられる。
 どこか遠くの知的生命体が高性能望遠鏡でこの様子を見ていたら,恒星風に飲み込まれていった地球の燃えさしが放つX線が見えるかもしれない。(AstroArts)
NASA