アベル銀河団
ESO 325-G004
2007_04_24
 このNASAハッブル宇宙望遠鏡イメージは,星座ケンタウルス座の方向4億5000万光年に位置する,アベルS0740と呼ばれる銀河団である。銀河団の中心で大きな巨大楕円銀河ESO 325-G004は,1000億個の太陽と同質量である。
 ESO 325-G004を取り巻く銀河の中にはAbell S0740に所属していない(手前や奥の銀河が重なっているだけの)ものも存在すると考えられるが,とにかく多様な形をしている。銀河は渦巻銀河や楕円銀河などに分類できるが,ここに写っている銀河には「紡錘銀河」(画像最上部やや左)や「蝶ネクタイ銀河」(ESO 325-G004の左下)とでも呼びたくなるような奇妙なものもある。
 このイメージは,2005年1月および2006年2月にハッブルの掃天観測用高性能カメラを使用して得られたイメージから合成して作られた。
 研究者の注目が一番集まっているのは,中心のESO 325-G004である。
 ESO 325-G004の中心核がとりわけ明るく見えているが,その外側にもハロー(銀河を包み込む周縁部の構造)が広がっていて,数十万個の星が密集した「球状星団」が何千個も散らばっている。球状星団はESO 325-G004の手前にある恒星や奥にある銀河と重なって見えるが,れっきとしたESO 325-G004の一部である。数百万年かけて中心核の周りを回っている。
 さらに興味深いのは,そのほかならぬ中心核だ。拡大してみると,中心核の周りにはいくつかの弧が見られる。これは実在する弧ではなく,われわれから見てESO 325-G004の反対側にある小さな銀河の光が,中心核の強い重力で曲げられてこのような像を作っているのだ。アインシュタインが理論的に予言した「重力レンズ」と呼ばれる効果である。どんな天体でも重力によって多少光を曲げることができるが,奥の天体の像がゆがんで弧やリングに見えるほど強力な重力レンズ源はESO 325-G004よりも近くにはないという。
 地球に近いおかげで,ESO 325-G004を構成する星の動きを観測することによって中心核の質量が求められる。これを中心核の周辺にできた像と比較することで,ESO 325-G004の構造や重力レンズの働き方について詳しく研究できる。(AstoroArtsより)
Hubble