NASA のハッブル宇宙望遠鏡が撮影した,「サッカレーのグロビュール」と呼ばれる暗い天体の写真が公開された。
この天体は 1950 年に天文学者 A.D. Thackeray によって発見された。周囲に見える赤いところは星形成領域 IC 2944 で,5900
光年彼方のケンタウルス座の方向にある。グロビュール(小球,胞子)という,高密度の暗く不透明な雲の起源や性質については,今のところほとんどわかっていない。ただ,どうやら
HII 領域(電離水素領域)と呼ばれる大きな星形成領域と関連がありそうだということだけはわかっている。
写真中で右上に見える大きなグロビュールは,実際は 2 つのものが重なって見えている。それぞれの大きさは長い方向でおよそ 1.4 光年で,2
つ合わせた質量は太陽の 15 倍以上である。周りを取り囲んでいる HII 領域 IC 2944 はガスやチリに満たされており,太陽よりもはるかに高温で質量の大きい
O 型の星の集団によって照らされ,熱せられている。
ハッブル望遠鏡の高い分解能のおかげで,これらグロビュールの複雑な構造を調べられるようになった。観測の結果,どうやらグロビュールは激しく破壊されているらしいということがわかってきた。おそらくは
O 型星から放射されている強い紫外線によるものだと考えられている。
ガスやチリの濃い塊であるグロビュールは O 型星が誕生する以前から存在しており,もし O 型星の誕生が遅ければ,収縮して太陽のような低質量の星々になったのだろう。しかし,O
型星が誕生してしまったために,グロビュールの周りの低密度部分を剥がされて存在をあらわにされただけでなく,さらに紫外線を浴びてバラバラに壊されてしまうという過酷な運命になってしまったようである。(AstroArtsより) |
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